生活と、そのほかのこと 10/16〜10/22号
<目次>
・『作品』の話 千葉雅也『アメリカ紀行』
・食事と生活 10/16〜10/22
『作品』の話
千葉雅也『アメリカ紀行』
2017年10月〜翌年2月にかけて、当時、立命館大学の准教授だった千葉さんがハーバード大学に客員研究員として滞在していた際のエッセイ。2019年5月の出版。
千葉さんの最初の小説「デッドライン」が発表されたのは『新潮』2019年9月号。『アメリカ紀行』を読み返すと、小説の文体がすでに多く現れているように感じられる。千葉さんの研究に関する話題も出てくるし、日記のような部分もあるし、とつぜん俳句が差し込まれたりする。始まり方や終わり方にも独特のリズムのようなものを感じる。
執筆手法についての記述があった。レヴィ=ストロースがそうしたとされるように、ひたすら書き下ろす段階と、その結果をいろいろと編集する段階に分けて書くというもの。この話が『ライティングの哲学』につながる。
千葉さんは、わたしがこの数年でいちばん影響を受けた作家のひとりだと思う。この事柄に対して千葉さんはどういうだろうなと考えることもある。こういうふうに書けるようになりたい。
食事と生活
10月16日(月)
フルタイムで働いているわけではないけれど、それにしたって月曜の朝は憂鬱だ。
夕食は、麻婆茄子、白菜と卵の中華風スープ。
前日のギョウザの種としてナスを買ったときから、余った分は麻婆茄子にしようと考えていた。麻婆茄子はけっこう好きなのだ。ニンニクと甜麵醬を使い切る。ちょうど前日の「鉄腕DASH」で、田んぼの収穫後に麻婆茄子が振舞われていて、そこではトマトも隠し味のように追加されていた。トマトはないのでお酢を少し足してみる。軽い酸味がアクセントになって美味しい。
副菜は、白菜をたっぷり食べるスープ。AJINOMOTOの鶏がらスープは手軽に味が決まってよい。
10月17日(火)
仕事先でいろいろと話を聞く。仕事はあるところにはある。猫の手も借りたいと思っている人はたくさんいるけれど、わたしのところにちょうどいいサイズの仕事が回ってくるわけではなく、なかなか難しい。もう少し働きたいところ。
乗代雄介『本物の読書家』の表題作を読み終えた。評論や小説の引用がいくつも入ってくる文章。こういう小説もあるのかと驚く。あまり読みやすくはなかったが、ストーリー展開が小気味よく面白い。ラストの展開は蛇足のように感じたけれど、これでいいのだろうなと思える。引用が多い小説というと北村薫の『六の宮の姫君』を思い出す。主人公が芥川について卒業論文を書く話で、とても好きな作品だが読みやすくはない。「本物の読書家」は川端康成にまつわる話。川端の小説も読んでみよう。
夕食は、ホワイトシチュー、野菜サラダ。
牛乳が余っていたのでホワイトシチューにする。半端に余っていた無塩バターをたっぷり使い、タマネギ、人参、じゃがいも、白菜を炒めてから小麦粉を加えてさらに炒める。水と牛乳と酒を入れ、コンソメと塩コショウで味を調える。あらかた煮込めたらソーセージを入れる。こういうときの肉はソーセージに限る。早く入れすぎるとスープの方に味が逃げてしまうので注意。
市販のカットサラダに、数日前に買ったキューピーのバジルソースを掛ける。ゆで卵もつくった。このくらい手を掛けてあると、市販のサラダで手抜きをしている感覚もない。
10月18日(水)
水曜は職場に行かない日。洗濯機を回しながらニュースレターを書く。
思い立って出版社関連のアルバイトを探してみるとちょうど見つかった。早速応募してみるが、数時間もたたずに断りの連絡が届く。さすがに猫の手では困るのだろうなと納得はするものの、もう少し気を持たせてほしかったり。
昼食は、前夜のホワイトシチュー。けっこうボリュームがあったので、妻に持たせてあげたらよかった。
夕食は、回転寿司に行く。待合スペースではさまざまなことが起きていて、目が離せなかった。
こういうときはハンバーグ軍艦のような変わり種をひとつは食べたい。ふたつ食べてもいい。物価高の影響もあって寿司のサイズはきっと小さくなっているのだけど、若いころよりも食べる皿の数は減った。食が細くなるのを意識すると、加齢をあらためて感じる。
10月19日(木)
シネ・リーブルで『白鍵と黒鍵の間に』を観た。変な映画! でも面白かった。小説でもマンガでも演劇でもそうだけど、その表現手段だからこそつける嘘があって、この映画もそういう嘘を大胆に使い、そして成功していた。だから面白い。
夕食は、ラーメン、鶏の唐揚げ、ニンジンとちくわの胡麻マヨネーズ和え。
ラーメンは数日前の成功体験を生かして、スープ付きの生麺タイプの商品を買う。チャーシューも買う。鶏の唐揚げはスーパーの惣菜。だいぶラクをしたので副菜をひとつ追加するくらいは構わない。ニンジンを千切りにして電子レンジで数分温め、輪切りにしたちくわ、擦ったゴマ、マヨネーズと和える。ゴマ和えの簡易版のような感じになっておいしい。
10月20日(金)
谷崎潤一郎『痴人の愛』を読み終える。通勤中に少しずつ読み進めていたが、鹿児島出張のときにカバンから出したきり忘れていた。物語の語り手がどうしようもなくつまらない男で、どうなんだろうなと思う。令和のわたしには、ダメ男につかまってしまい身を崩した不運な女性の話として読める。かつては逆の読まれ方だったのだろうなとは思うが、どうなんだろう。
夕食は、鶏肉とじゃがいものソテーのバジルソース掛け、豆モヤシとちくわのナムル、カットサラダ、ニンジンとわかめの味噌汁。
バジルソースをつかうところから考えて、鶏肉とジャガイモをソテーにした。カットサラダを一番下に敷いてその上にソテーを載せるつもりだったのだけど、すっかり忘れていて別の皿になる。
前日の副菜のちくわが余っていたので、モヤシと和えてナムル風の味付けにする。味噌汁のニンジンも、前日に取り分けておいたもの。作り置きはずっと苦手だけど、こういうふうに2日間に渡って食材を使うことはできるようになっている。
10月21日(土)
母に『天狗の台所』のドラマを薦めたら、3話を観たというLINEが届く。ピェンローとパウンドケーキの回。ドラマの中で干し椎茸を水で戻す時間が足りずにお湯で戻していたが、母はそのシーンが気になったとのこと。お湯で戻しても旨味がじゅうぶんに出ないのだという。なるほど。それならあのシーンの基は、口ぶりから感じられるよりも複雑な心境だったのかもしれない。
少し遠出をして、紅茶の店でオフ会。オフ会ではない。MさんにBluesky上で声を掛けてもらい、ホームベーカリーを借り受けに行く。せっかくなのでお茶をご一緒する。
Mさんとはリアルで会うのは初めてだが、それもいまや珍しいことでもない。インターネット上で初めて出会ったのは15年くらい前で、会わなくなったのは10年くらい前。そして半年ほど前に再会した。そういうこともある。
二次創作をせずにはいられない人の話をたっぷりと聞く。知らない話を聞くのは好きだ。特に、その人が自身の好きなことを楽しそうに話してくれるのを聞くのはとても好きだ。
解散してから梅田で妻と落ち合い、ホームベーカリーを抱えたまま焼き鳥屋で早めの夕食。帰宅すると「キングオブコント」が始まったところだったので観る。自分の好きなお笑いとは合わないところも多いなと感じつつも、ずっと面白かった。
10月22日(日)
朝食を片付けてから、さっそくホームベーカリーで食パンをつくり始める。材料を慎重に計量したら、あとは機械に任せるだけ。運転音がかなり大きく、唐突に動く。深夜に稼働させておいて朝食に焼きたてを食べるのは難しそうだ。
近所のスーパーで買い出し。干し椎茸、白菜、豚バラ肉に鶏もも肉、ついでに安売りしていたゴマ油も買う。店員さんは献立に気付いただろう。
干し椎茸を水に漬けてから、近所のショッピングセンターまで出掛ける。とてもいい天気。一年の中でいちばんいい日だったかもしれない。陽射しがよく当たり、風はほとんどなく、暑くもなければ寒くもない。
無印良品で手帳を買う。ありがたいことに仕事の依頼があった。それはよいのだけど、作業期間や締切が重なってしまっている。Googleカレンダーで管理していると混乱しそうだと思い、紙の手帳に頼ってみたくなった。
帰宅した頃に食パンが焼ける。うまく焼けた。
昼食はワンプレートランチ風にした。カットサラダ、目玉焼き、ソーセージ、焼き立ての食パン。
とにかく天気がよいので、妻を誘って2度めの散歩に行く。公園やお店の場所を確認しながら歩く。
夕食は、ピェンロー、ニンジンとちくわの胡麻マヨネーズ和え。
人生初のピェンロー。干し椎茸の出汁と煮込んだ肉だけで勝負できるのかと、正直なところ半信半疑だったが、うまい。なるほど。干し椎茸はたくさんあるので、今シーズンは何度もつくろう。
編集後記
前々回のニュースレターで登場した「編集後記」ですが、前回は書くのを忘れました。また、今回はコラムも短詩もありません。まだフォーマットが定まり切っていないし、どのくらいの時間を掛けて書くのがいいかもわかっていません。
ところでこれって「編集」しているんだろうかという疑問も浮かびましたが、Blueskyへの短文投稿をもとに取捨選択をしたり文章を整えたりして読者に届けているので、たしかに編集しているはずですね。とにかく書く段階と、書いたものを整える段階が時間差で起こっている。
しばらく仕事が立て込んでいる予定なのですが、ニュースレターの定期刊行は守りたいと思っています。コンテンツはさらに減るかもしれませんが。
次回は、11/1(水)に発行予定です。
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