生活と、そのほかのこと 10/9〜10/15号
<目次>
・夢は見る
・食事と生活
・『作品』の話 森博嗣『馬鹿と嘘の弓』
夢は見る
1年ほど前、ある映画についての文章をウェブで読んだ。その書き手は自身を高校3年生だと書いていて、少し驚いた。映画はどちらかといえば大人に向けてつくられている作品だと感じていたからだ。わたしが高校生のときに、この映画を観に行けただろうか。こんなふうに感想をウェブに書けただろうか。その文章を書いた若い女性は小説も書いていた。たぶんわたしは彼女をうらやましいと感じている。
大学合格を境にほとんど更新されなくなっていた彼女のSNSが、先日久しぶりに更新された。そこには、「友人が夢に向かって行動を始めて触発されたので、自分も頑張っていこうと思う」ということが彼女の言葉で書かれていた。
わたしと彼女は20歳ほど離れている。わたしの周りにはもう、夢に向かって走り出す友人はいないし、触発されることもたぶんない。学生の頃の友人たちとは離れてからずいぶん長い時間が経っていて、近況を聞いたとしても刺激を受けることはなさそうに思える。大人になってから出会った友人もわずかにいるが、「自分も頑張ろう」というまっすぐな影響を受けることは想像しにくい。
心が歳をとったのだ。寂しいし悲しいけれど現実としてそうなのだな、と思った。
その数日後に、三浦大知のライブコンサートへ行った。ライブの中盤で、「いつしか」という曲が歌われた。この曲は映画『ぼくらのよあけ』の主題歌であり、わたしが三浦大知というアーティストに注目するきっかけでもある。
「いつしか」はこんな歌詞から始まる。
いつしか 苦しいほど笑うことも なくなるのだろうか
いつしか 胸を張り 大きな夢を語ることも なくなるのだろうか
あっ、わたしのことだ。と、思った。
わたしのことが歌われているんだと思いながら、素晴らしいパフォーマンスを見ながら、泣いていた。
わたしの近くに、夢はもうほとんどないかもしれない。中年になるということはそういうことだろう。でも、大きな夢を語ることはできないのだとしても、毎日をしっかりと生きていくことはできる。思いきり走り始めることはできなくても、歩くのをやめないように努力することだって十分に偉業だ。
忘れないで 今日のことを 肩を並べ見つけた世界
忘れないで 約束しよう いつかまたここで会おう
このライブのことを忘れないでいよう。また彼に会いに来よう。彼女のことも忘れないでいよう。そう思った。
夢は見るわたしは歳をとるけれど夢を見ることはまだまだできる
食事と生活
10月9日(月)
3連休3日め。
連休はありがたいが、食事を準備する回数が増えるのはやっかいだ。ふだんの買い物では、その日の夕飯につかう食材しか買わないことが多い。料理を始めた頃の習慣が染み付いていて、余分に買い置きしておくことは苦手だ。
昼食は、エビ入りの塩焼きそば。エビは殻がむいてあるものを前日に買っておいた。背わたを取り、半分は粗く刻む。味付けはサッポロ一番塩ラーメンの粉末スープ。数日前にキムチラーメンにしたときの余り。
昼食を片付けたら豚バラのブロック肉を茹でる。これも前日に買っておいたもの。消費期限が近くて少し安くなっていた。こうやって翌日分の買い出しをしておくのが、なかなかできないでいる。
夕食は、豚の角煮、ハムとオクラのおかか炒め、大根サラダのスープ。
豚の角煮はリュウジさんのレシピを参考にした。豚の茹で汁の残りはいちど冷蔵庫で冷やし、固まった脂分は捨てて、残りをスープにする。カット野菜サラダを1袋いれて温め、塩を少しだけ足した。
オクラの炒め物は『きのう何食べた?』から。なんとなくハムも追加して、鰹節と少しの醤油で炒める。シンプルなものが美味しい。
10月10日(火)
大阪にはサイゼリヤがない。いや、実際には何店舗もあるのだけど、街の規模に対してはかなり少ないと感じている。関東にいた頃はことあるごとにサイゼリヤに行ったものだ。気軽に行ける場所に気軽な店があるのは幸せなことだったなと思う。
昼食と午後の作業を兼ねてサイゼリヤに入るが、店の入口付近の席になったため落ち着かない。順番待ちのお客さんがすぐ近くに座っているのに悠長にPCを開いて作業するのはためらわれた。
夕食は、ソース焼きそば、カニカマ、豆腐とわかめの味噌汁。
カニカマは商品名「ほぼかに」。これ美味しい。そして乾燥わかめがやっぱり美味しい。
気温が本格的に下がってきて、そろそろ寒いくらい。このくらいの時期に布団にくるまってゴロゴロぬくぬく転がるのが、何歳になっても好きだなと思う。
10月11日(水)
毎週水曜日にニュースレターを発行する予定だったのだけど、仕事の原稿が片付いていないので延期。モチベーションをあらたに頑張ったおかげか、半分は納品できた。
夕食は、サツマイモと三度豆と鶏肉の味噌汁、ニンジンとモヤシの卵炒め。
有賀薫さんがBlueskyに投稿していた「さつま汁」を見て、さっそく夕飯に採用。長ネギが高かったので豆にしたり、冷蔵庫に生姜が余っていたので追加したりした。
棋士の藤井聡太さんがタイトル8冠制覇。すごいな。圧倒的に強いというのは、どういう気分なんだろう。「強者ゆえの寂しさ」といった題材を扱ったフィクションは少年マンガやSFなどに多くありそうだけど、現実にこれほど強い人というのはほとんど見当たらないだろう。吉田沙保里さんや羽生結弦さんのようなアスリートとの対談を読んでみたい。
10月12日(木)
仕事の原稿はすべて納品できた。よかったよかった。
大阪駅周辺には作業向きのカフェがあまり多くない。昼から飲める安居酒屋もいいが、ドトールとかヴェローチェとかがあってほしい。ホリーズカフェはまだなんとなくチューニングが合わない。
夕食は、じゃがいもと鶏モモ肉のオリーブオイルソテー、野菜サラダ、カップスープ。
メインは今井真実さんの「ローズマリー風味の鳥じゃが」を参考に。Blueskyでフォローしている方が紹介していた記事から。
ローズマリーは買わなかったので黒胡椒と乾燥パセリを振る。これはたしかにとても美味しい。料理に慣れてくると、こういうシンプルな組み立てで十分だということを忘れてしまいがちだ。
10月13日(金)
毎朝やっている「ことのはたんご」で、まさかの一発的中。普通に解きたかったかもしれない。
2日遅れのニュースレターを発行。テスト送信の2回めで、タイトルの日付が間違っていることに気付き、あわてて修正する。自分ひとりで校正までやるのはやっぱり大変だ。
夕食は、サバの塩焼き、冷奴、漬物、カニカマ、納豆。
妻が飲み会で不在だったので自分も外で飲んでこようかと考えたが、家でのんびりすることにした。魚を食べようと思ってサバを焼く。スーパーの鮮魚売り場には少量の魚が少なすぎると思う。
焼酎を飲みながら、ドラマ『天狗の台所』を観る。とてもよい。
テレビを見ながらネイルを左手だけ塗った。昼間に買ったばかりのNAIL HOLICのラメ入り。神経質にちゃんと塗らなくてもきれいに見える。
10月14日(土)
前日に見切り品の釜揚げしらすを買っていたので、朝も昼もしらすを使う。
朝食はしらすマヨトースト。
昼食はしらすのペペロンチーノ。
夜は、ニンジンとツナの和風パエリア、かぼちゃの姿蒸し、カニカマ、じゃがいものポタージュ。
かぼちゃはプッチーニという品種。阪急オアシスで普通に売られていたのがかわいくて買ったものの、食べ方には悩む。ヘタの部分を切って、種をスプーンで取り出し、アイラップに入れて電子レンジで5分くらい加熱する。ヘタを水平に切るのが大変だったから、切る前に少しレンジにかけた方がよさそう。そのままスプーンですくって食べる。
ポタージュスープもつくった。ジャガイモとタマネギをバターで炒めてしばらく煮てからハンドブレンダーでペースト状にする。ブレンダーはたまに思い出しては使う程度。なんとなく面倒が勝ってしまう。
10月15日(日)
マニキュアをすこし塗りなおす。左手の親指はNAIL HOLICのGR711を2度塗ってトップコートもしていたが、その上にPK842を重ねた。いい感じ。ビビットな色はこういう重ね方をすると落ち着くし塗りムラも目立たなくなる。人差指と薬指はPK842で中指と小指はYE571。右手はぜんぶYE571にした。
牛乳を買ったまま使っていないことを思い出し、牛乳寒天をつくることにした。掃除をしてからスーパーに買い物に行き、フルーツ缶詰を買う。
昼食はラーメン。材料費は2人分で700円ほど。ふだんは乾麺ばかりだし具材も簡単なものが多いけれど、生麺タイプのものは味がしっかりしているし専用のチャーシューもおいしくて、店で食べるのと変わらない満足感があった。
牛乳寒天は予想していた2倍くらいの量ができてしまった。大きいことはいいことだ。
夕食は、ナスと白菜の水餃子バジルソース掛け、韓国風蒸し豆腐、舞茸とニンジンの味噌汁。
『天狗の台所』で見た水餃子が食べたかった。市販の餃子を使うことも考えたけど、バジルソースを掛けたときのイメージができないので自分でつくる。といっても皮は市販のもの。中身は、刻んだ白菜とナス、豚挽き肉、にんにく、ショウガ。味付けは酒、塩、コショウ、鶏ガラスープ。包むのは妻に手伝ってもらった。バジルソースはキューピーのもの。うまい。
石田夏穂の小説『我が友、スミス』を読んだ。競技としてのボディビルにのめり込んでいく女性が変化していく中編。筋トレの描写に細かなリアリティがある。ジェンダーやルッキズムの話題への踏み込み方がこの小説の持つ力にちょうど合っているようで面白かった。他の作品も読んでみよう。
『作品』の話
森博嗣『馬鹿と嘘の弓』
森博嗣の最新シリーズの第1作。2020年10月発行。
後期(と言ってしまっていいだろう)森博嗣の最高傑作だと思う。初期シリーズや中期シリーズにも登場するキャラクターが主な視点人物となっている。重たい物語で気軽には薦められない。今回すこしだけ読み返したけれど、だいぶ苦しかった。しかし傑作である。
シリーズ3作めの『情景の殺人者』が最近出たばかり。読むのが楽しみだ。
次回は10/25(水)に配信予定です。
すでに登録済みの方は こちら